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    ロジャーズ「必要充分」論文(2)


    引き続き、カール・ロジャーズの1957年の有名な論文、「セラピーにおけるパーソナリティ変化の必要にして十分な条件」("The Necessary and Sufficient Conditions of Therapeutic Personality Change", Journal of Consulting Psychology, Vol. 21, No. 2, 95-103)を細かく読んでいく。

    昨日は冒頭部分から「問題」の節まで。

    今日は教科書でたびたび引用される「条件」の節。

    この部分は邦訳(伊東訳)でほとんど問題がないのだが、細かい用語選択の部分で、変更を加えている。

    条件

    The Conditions

    As I have considered my own clinical experience and that of my colleagues, together with the pertinent research which is available, I have drawn out several conditions which seem to me to be necessary to initiate constructive personality change, and which, taken together, appear to be sufficient to inaugurate that process. As I have worked on this problem I have found myself surprised at the simplicity of what has emerged. The statement which follows is not offered with any assurance as to its correctness, but with the expectation that it will have the value of any theory, namely that it states or implies a series of hypotheses which are open to proof or disproof, thereby clarifying and extending our knowledge of the field.

    伊東訳では「私は、私自身および同僚の臨床体験~必要であると思われ、また統合してみるとそのプロセスを始動するのに十分であると思われる、いくつかの条件を引き出してみた」と訳されているが、原文をみると、順番がやや異なる。

    伊東訳の解釈は「必要で十分な条件」を引き出した、ということになるが、「必要と思われる条件を引き出したところ、そしてそれをまとめてみたところ、それは充分条件でもあるように見えた」ということだろう。


    また、伊東訳では、ロジャーズの仮説提示が「是認されるかもしれないが」と訳されているが(否認される選択肢が訳出されていない)、「証明されたり反証されたりすることに開かれた」仮説提示というほどの意味で、そうした「反証可能性」が知識を明確にして拡張する、というのがロジャーズの意図だろう。


    私訳:

    条件

     私自身の、また同僚の臨床経験を、利用可能な適切な研究とともに検討してきたのだが、私にとって、建設的なパーソナリティ変化を開始するのに必要であると思われる、いくつかの条件を引き出した。そしてそれらの条件は、まとめると、そうしたプロセスを始動するのに充分であるように見えるのだ。この問題に取り組みながら、私は明らかになってきたことのシンプルさに驚いていた。以下に述べることは、その正しさについて確信を持って示されるというよりも、理論的価値を持つだろうという期待を持って示されるものだ。いわば、それは証明されたり反証されたりすることに開かれた、一連の仮説といったものを提示し、含意するのだが、それによって我々のこの分野の知識を明確にし、拡張するのである。


    次の段落。

    Since I am not, in this paper, trying to achieve suspense, I will state at once, in severely rigorous and summarized terms, the six conditions which I have come to feel are basic to the process of personality change. The meaning of a number of the terms is not immediately evident, but will be clarified in the explanatory sections which follow. It is hoped that this blief statement will have much more significance to the reader when he has completed the paper. Without further introduction let me state the basic theoretical position.

    ここでは、この論文の構成がほのめかされている。

    まず条件について述べ、それに続く各項目(ロジャーズはsectionといっているが)が用語解説になっている、という構成だ。

    trying to achieve suspenseを伊東訳では「サスペンス小説を書こうとしている」と訳されていて、まあそういうことなのかもしれないが、直訳すれば「持続的な緊張感を達成しようとする」「未決定の宙ぶらりんの状態を成し遂げようとする」とでもなるだろう。

    ロジャーズは(この論文でないところで)サスペンス小説を書きたかったのかもしれないが。


    私訳:

     この論文で私は、未決定の状態を成し遂げようとしているわけではないので、厳格かつ要約された用語で、一挙に述べよう。パーソナリティ変化の過程にとって基本的であると私が感じるようになった、六つの条件である。多くの用語の意味が、即座に明白だというわけではないが、それらの意味は、続く説明のためのセクションで明確にする。この短い言明が、この論文を読み終えたときに、読者にとって、より大きな重要性を持つことを希望する。これ以上の前置きはなしにして、基本的な理論的見解を述べさせていただこう。


    次の段落。

    For constructive personality change to occur, it is necessary that these conditions exist and continue over a period of time:

    1. Two persons are in psychological contact.

    2. The first, whom we shall term the client, is in a state of incongruence, being vulnerable or anxious.

    3. The second person, whom we shall term the therapist, is congruent or integrated in the relationship.

    4. The therapist experiences unconditional positive regard for the client.

    5. The therapist experiences an empathic understanding of the client's internal frame of reference and endeavors to communicate this experience to the client.

    6. The communication to the client of the therapist's empathic understanding and unconditional positive regard is to a minimal degree achieved.

    No other conditions are necessary. If these six conditions exist, and continue over a period of time, this is sufficient. The process of constructive personality change will follow.

    カウンセリング史上もっともよく引用された部分である。

    しばしば誤解されることだが、これは「クライエント中心療法」ないし「パースン・センタード・アプローチ(PCA)」での必要十分条件というわけではない。

    ロジャーズはクライアント・センタードを超えて普遍的な条件について述べている。

    もちろん、もっとも精査されたのはクライエント・センタードの仕事だとしても。

    そしてこうしたロジャーズの主張に対して、当時よくあった反論が「そのようなことはすでにやっている」というものだったようだが、ロジャーズの主張はあくまでも、クライアントのパーソナリティ変化がセラピーにおいて生じるとき、そこではなにが起こっているのか、そしてその最低限の条件はなんなのか、ということを「操作的用語で」明確に書き留めることが必要だ、というだけのことである。

    少し先走るが、この論文の後半で、ロジャーズは次のようにいっている:

    それは古典的精神分析の場合でも、あるいは現代における後継者たち、あるいはアドラーのサイコセラピー、その他の場合にも適用されるものなのである。

    つまり、これらの「条件」にあるような伝達、受容や共感的理解が有益に伝わるためのチャネルはすべての療法において存在している。

    ロジャーズは転移の分析や解釈や自由連想といった精神分析の手法をとりあげているが、それらをチャネルとして、受容や共感的理解が伝わるだろうと述べている。

    クライアント・センタード、あるいは傾聴で「さえも」伝わる可能性がある、という。

    逆に、傾聴技法にあるような「気持ちのリフレクション」によって、「カウンセラーが共感的に理解していない」ということも伝わるだろう、と述べる。


    当該セクションについて検討するさいにもう一度触れたいが、この論文を再読していく方針として、若島孔文のつぎの言葉を引用したい:

    クライアント中心療法の失敗はその普遍的原理を具現するものの一つでしかない”傾聴”という個別的技法を、あたかも普遍的な術であるかのように広めてしまったことにあります。

    もう一点、細かい部分について。

    Two persons are in psychological contact.という部分が、「2人の人が心理的な接触を持っていること」(伊東訳)と訳されているのだが、「心理的な接触」とはなんだろう?

    これは、後に続く部分を読めばわかることだが、たんに「2人の人の存在=現前性がそれぞれ、相手の知覚において意味を持っていること」というだけの意味である。

    こういう状況を、社会学では「相互作用」とよんでいる。

    あるいは、たんに知覚していればよいのだから、「相互作用」では接触の度合いが強すぎるのかもしれない(社会学ではたんに知覚しあうだけでも「相互作用」とよぶが)。

    いずれにせよ、ぼくには「心が接触する」(心理的な接触)ということがなにを意味するのか、よくわからない。

    2人の人物がいて、脳を共有していないのであれば、心と心が接触することはありえないからだ。

    超能力的な意味での「テレパシー」はまさにこうした「心理的な接触」を表現しているのだと思うが、ロジャーズがそのようなオカルトを主張しているようにも思えない。

    したがって、ここでは「心理学的に『接触』と定義されるような心的状態」と解釈し、「心理学的な接触」と訳出することにした。

    (心理学でそのような定義があるのかどうかは存じ上げないが)


    私訳:

     建設的なパーソナリティ変化が生じるために、これらの条件が一定の期間、存在し続けることが必要である:

    1. 二人の人が心理学的な接触を持っている。

    2. 第一の人、クライエントとよぶことにするが、この人が不一致(incongruence)の状態にあったり、傷つきやすかったり、不安であったりする。

    3. 第二の人、セラピストとよぶことにするが、この人がその関係のなかでは、一致して(congruent)、あるいは統合されている。

    4. セラピストはクライエントに対して無条件の肯定的配慮(unconditional positive regard)を経験している。

    5. セラピストはクライエントの内的参照枠について共感的理解(empathic understanding)を経験しており、クライエントにこの経験を伝えようと努力している。

    6. セラピストの共感的理解と無条件の肯定的配慮について、クライエントへの伝達が、最低限度成し遂げられている。

     他のいかなる条件も必要ではない。これらの六つの条件が存在しており、一定期間存在し続けるならば、これで充分である。建設的なパーソナリティ変化のプロセスが、それに続くだろう。



    ダイエット

    (2月15日分)

    395日目。

    体重64.9kg(17.6kg減)。体脂肪率18.5%(9.1%減)。



    ぼくのダイエット法はコチラ(ようはケトジェニックダイエットを認知行動療法でサポートしたものです)



    ダイエット指南のメルマガ発行してますダイエットの教科書@まぐまぐ



    認知行動療法ダイエットプログラム主催しています(ぼくも実践しているケトジェニックダイエットの指導もしています)



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