Entries

    2013年版:世界の観え方を変えた8冊+α+ガジェット

    今年読んだ本(なので、出版年が今年とはかぎらない)で、人生を変える・世界の見え方を変えるインパクトを与えた本をリストアップしたい。

    以前から読み始めてはいたけれども、今年になって、焦点が合って腑に落ちた、というものが多くを占めている。

    本以外に、世界観をガラリと変えたガジェットも加えた。

    順不同。


    都築響一『夜露死苦現代詩』

    2006年新潮社刊、2010年ちくま文庫刊。

    文庫版には「文庫版あとがきにかえて 演歌というポエトリー・リーディング」と題された、作詞家吉岡治――水上勉の推理小説『飢餓海峡』をもとに書かれた、同名タイトルの石川さゆり『飢餓海峡』の作詞家――のインタビューを中心に構成された1章が加えられている。


    ぼくが長期スパンで取り組んでいるテーマに、「声の獲得、ことばの獲得、それも身体レベルでの」があり、短期スパンでは「詩歌療法」がある。

    前者の声の獲得メソッドに関しては後述する鴻上尚史の項で述べるとして、後者の詩歌療法では、これも発声に関連づけて、「ポエトリー・リーディング」に焦点化することにした。

    本書の谷川俊太郎との対談では「肉声による朗読」の危険性にも触れられており(戦時下日本において肉声による朗読は動員に利用された)、日本の戦後詩は徹底的に朗読を拒否してきたのだが、谷川俊太郎は積極的に海外の朗読会(ロックフェスのノリで行われている)に参加している。

    本書は「ストリート」つまり路上のことばを集めた傑作だ。



    谷川俊太郎『自選 谷川俊太郎詩集』

    これまでも谷川俊太郎のコンピレーションは何冊も出版されているが、本書は最初期(『二十億光年の孤独』)からもっとも最近の詩集までの、全詩集から、谷川自身によるチョイスで、まんべんなく収められている。

    谷川入門としてすばらしい選集だ。

    ぼくの感受性にとっては、昔のものから最近のものにかけて、どんどん良くなっている、逆にいえば初期のものはイマイチ、と感じる。



    鴻上尚史『発声と身体のレッスン:魅力的な「こえ」と「からだ」を作るために』

    「コミュニケーション」ができるためには、「ことば」を発することができなければならない。

    「ことば」を発することができるためには、「声」を発することができなければならない。

    「声」を発することができるためには、それを支える「からだ」がなければならない。

    本書は、「声」を発するためのきわめて実利的なメソッドと、「からだ」をつくるためのきわめて実利的なメソッドから成っている。


    ぼくがこの本にはじめて接したときに、少しだけ不快に感じたのは事実だ。

    それは、暗黒の学生時代に、竹内敏晴『ことばが劈かれるとき』を読んだときに、「ぼくの感じている苦しみが、あますところなくここに書かれている」と思ったことと関係している。

    学生時代には、引き続いて『「からだ」と「ことば」のレッスン』なども読んだ。

    鴻上尚史の本に比べると、竹内メソッドは大雑把で、なんとなくの感がある。

    しかし竹内メソッドには『ことばが劈かれるとき』に描かれたような哲学や理念があり、読者が補うことができる。

    鴻上『レッスン』は、そうした哲学や理念、読者の「苦しみ」にはまったく触れない。

    また、あるメソッドを示したとしても、「それがなぜ良いのか」という理論的な説明も省いている。

    (とはいえ、各レッスンのあとに「注意点」として、かなり詳細なFAQを掲載しているが)

    きわめて淡白に、「解法」のみを示し続ける。

    この姿勢に反感を感じたのだ。


    ぼくもこの年まで生きてきて、いよいよ、「考えてきたこと」を、身体レベルにインストールしなければならないという段階にきた。

    そこで必要になったのが、鴻上レッスン式の、実利的な「解法」だった。

    2013年にぼくに生じた最も大きなできごとは、「声の獲得」だったといえる。



    ジョン・カバットジン『マインドフルネスストレス低減法』

    2013年にぼくが臨床家として獲得した大きなツールには、「フォーカシング」がある。

    それに加えて、「マインドフルネス」もそうだ。


    ここにマインドフルネスのリファレンスを挙げようというときに、自己検閲との若干の葛藤があった。

    本書の代わりに、より「エビデンス・ベイスド」なシーガル、ウィリアムズ&ティーズデール『マインドフルネス認知療法』を挙げることで、予防線をはろうとも思った。

    シーガルズらの本は、基本的には、認知行動療法の研究者たちが、カバットジンのメソッドを研究対象とすることで成り立っている。

    シーガルズらは、カバットジンのやり方に接近することで、学会内にどのような印象を与えてしまうだろうと葛藤したことを正直に記している。

    彼らは「認知行動療法の効果維持バージョン」を探していた。その答えがカバットジンの「マインドフルネス」だったというわけだ。

    かれらの著作には、科学的体裁を担保するためのエビデンスも掲載されている。

    そしてなにより、各セッションでやるべきことがまとめられて章立てられた構成は、臨床家にとっても非常に使いやすい。

    つまりシーガルズらの本をここに挙げる方が、ぼくの臨床家としての印象も、より科学的で信頼できるものになるのではないか、という自己検閲があったということだ。

    しかし、シーガルズらはエビデンスでカバットジンの方法を裏付けはしたが、彼らの本に意義があるとすれば、自己検閲と戦って、思い切ってカバットジンのクリニックを訪問したということにある。

    ここで、ぼくもそのような自己検閲とは縁を切り、カバットジンに帰ることを選ぶ。


    簡単にいえば、マインドフルネスとは、呼吸と瞑想を使って効果を持続させる心理療法的メソッドのことである。

    日本にも、臨床的というよりもむしろ自己啓発に近い、呼吸や瞑想を指示する書籍はあふれている。

    シーガルズらが危惧したのも、「あまりに宗教的」なのではないか、という点だ。

    カバットジンは「仏教式の呼吸・瞑想法」を取り入れていることを隠さないが、厳密には仏教には内包されない、ヨーガ式も取り入れている。

    仏教が身近にある我々日本人から見ると、東洋的なものはなんでも神秘的でスピルチュアルなものである、といったような西洋人の遅れてきたニューエイジ、オリエンタリズムをそこに見いだしてしまうかもしれない。

    (仏教に親しんだ我々からすれば、仏教とヨーガを混同されるのは困る、ということにもなりかねないのだが、やはり臨床的に使えるのかどうかという観点から、そのような分別はクリニックの外に置いておくべきなのだろう)


    カバットジンが対象にしたクライアントは、心疾患やがん、頭痛や背中の痛み、エイズなどを抱えた人々だった。

    そうした疾患が「治る」のではない(器質的なものではない頭痛などは治るだろうが)。

    それらの疾患によって低下した生活の質を向上させるのだ。

    クライアントたちは「ストレスへの対処法」を学びにクリニックを訪れるが、明らかに「それ以上のものを学んでいく」という。



    美木良介『DVDで完璧にわかる!美木良介のロングブレスダイエット 必やせ最強ブレスプログラム』

    ところで、なぜ2013年になって、ぼくがいきなりマインドフルネスを使えるようになったのかといえば、種明かしをするとなんだそんなことかということになるのだが、本書でダイエットを開始したからである。

    テレビでも有名な美木良介のロングブレスだが、内実は「丹田呼吸法」である。

    なぜかテレビでは「丹田呼吸法」については触れていないようだが。


    これまで、丹田呼吸法という単語は、発声法のテキストにも、坐禅のテキストにも、その他、精神集中を要する作業の手ほどきをするテキストにも頻出してきたが、読者が身体レベルで身につけることは困難だった。

    けっきょくワークショップや坐禅会に参加する以外、丹田呼吸法をマスターする方法はなかった。

    (一部、発声法のテキストには、イメージングを利用した身体の使い方の誘導が載っていて、なかなかうまい方法だと思わされたが、それで確実に伝わるかどうかは心許ない)

    本書の付録DVDのインストラクションにそのまま従えば、誰でも丹田呼吸法をマスターできる。

    これは画期的なことだ。

    自宅でマインドフルネスをやってもらうために、クライアントにはこのDVDをお渡しすればそれで済むようになった。



    インスー・キム・バーグ&ピーター・ザボ『インスー・キム・バーグのブリーフコーチング入門』

    故スティーヴ・ド・シェイザーの妻であり、ミルウォーキーのブリーフ・ファミリー・セラピー・センター(BFTC)の設立者の一人でもあったバーグの最晩年の著。

    バーグはド・シェイザーが2005年に死去した16ヶ月後、2007年に死去し、BFTCはそれとともに閉鎖、すべての権利関係はソリューション・フォーカスト・ブリーフ・セラピー・アソシエーションに移管された。


    BFTC(ミルウォーキー派)は一時代を築いた。

    ぼくのバイブルの一冊はスティーブ・ド・シェイザーの"Keys to Solution"であり、それは今でも変わっていない。

    「ソリューション・フォーカスト」ということを言い始めて以降の彼らには、ぼくは個人的には違和感を感じていたが、いまでも彼らの残した遺産からは学ぶことが多い。

    本書はミルウォーキー派の立場から行われる「コーチング」の、コーチに対するインストラクションである。

    邦訳の帯には「産業カウンセラーにうってつけの本」と記され、産業カウンセラー学会の名誉会長と会長からの「推薦の辞」も掲載されている。

    このことにぼくははじめ違和感を感じた。

    産業カウンセラーといえば、いまだにロジャーズ派に固執した、旧態依然としたカルトという印象があったからだ。

    近年の産業カウンセラー養成講座のテキストをみると、ロジャーズ的な傾聴技法に加えて、近年の各種心理療法を学習することに比重が置かれていることが分かる。

    2006年(平成18年)に厚生労働省が交付した「労働者の心の健康の保持増進のための指針」にかんして、日本政府は2020年までに「100%の事業場において」現実化する、とうちだしたが、おそらくそれは不可能だろうと思う。

    「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」つまり事業場内に産業医ないし産業カウンセラーを設置できる中小企業は限られているからだ。


    それはともかく、日本のメンタルヘルスにも、迅速さや効率性が求められるようになったのは、悪いことではない。

    事業主やマネージメント部門が、よりはやく、より確実な、従業員の回復を要求するようになることは、日本政府の指針にしたがうならば、合理的な判断だ。

    被雇用者にとっても、「元の状態に戻れる」だけでなく「より先に成長できる」ほうがメリットが大きい。

    その意味で、本書の邦訳タイトルに「コーチング」という議論の多いタームを入れたことの意義も大きいだろう。


    なお、原著タイトルは"Brief Coaching for Lasting Solution"(永続的解決のためのブリーフコーチング)である。



    W.H.オハンロン『ミルトン・エリクソンの催眠療法入門』

    ブリーフセラピーは、パロ・アルトのグループ、つまりMRIがミルトン・エリクソンの行っていたコミュニケーションを、システム理論を用いてツール化したことから始まる。

    MRIは、家族療法の文脈では「コミュニケーション派」とよばれる。

    同様にエリクソンのコミュニケーションをセラピー戦略に用いたジェイ・ヘイリーらは「戦略派」。

    そしてより効率性や確実性にこだわったスティーヴ・ド・シェイザーらのミルウォーキー派は「解決志向アプローチ」(これは彼らの自称だが、現時点の家族療法ではもっともメジャーな立場になっているといえよう)。


    そのようなわけで、我々システムズ・アプローチ(システム理論にもとづく心理療法)の療法家は、エリクソンに常に立ち返らなければならない。

    ド・シェイザーもオハンロンも、セッション中に行き詰まったら自分のオフィスに急いで戻って、エリクソンの逐語記録をペラペラとめくったらしい。

    本書は、ミルトン・エリクソンという20世紀最大の心理療法家の方法を、もっともわかりやすくチュートリアルしたものだ(もともと2日間のワークショップを書き起こしたものだ)。

    以後のオハンロンは「可能性療法」と自らの立場を名づけたが、これは現在ぼくがやっていることに非常に近い。

    もちろんド・シェイザーとの差異化を明確にするための名づけなのだが、オハンロンは「ド・シェイザーはアイコンタクトしないけど、ぼくはアイコンタクトを重視するよ」とジョークで答えたという(ド・シェイザーはセッション中に天井をみつめる癖があったという)。

    「催眠」ということばに抵抗や偏見を感じている方にも読んで欲しい。


    惜しむらくは、原著が"Solution-Oriented"(解決指向)となっているのに、タイトルが「解決志向」となってしまったところか。



    釜池豊秋『医者に頼らない!糖尿病の新常識・糖質ゼロの食事制限 かまいけ式でスローエイジング!』

    ダイエットの成功(2013年にぼくは20kg落とした)を確実なものにしてくれたことに感謝し、これも取り上げておく。

    簡単に糖質制限を使ったダイエットをまとめると、

    • 準備期:牧田善二のレシピ本を使って2週間程度
    • 減量期:釜池式で、1食あたり糖質5g以下
    • 維持期:江部式で、1食あたり糖質20g以下

    これで心配するほどのリバウンドは起きないはずだ。

    糖質制限は、100%誰でも、急激に脂肪が減っていくので、急にやめたときのリバウンドも激しい(これは糖質制限以前の常識だが)。

    もし「継続する意志」に問題があると感じたら、ジュディス・ベック『認知療法で二度と太らない心と体をつくる』でマインドセットをつくる。

    ジュディス・ベックは、認知療法の生みの親アーロン・ベックの娘。

    タイトルに「認知療法」とあるのはそのせいだが、内容は認知行動療法である。


    (ガジェット編)

    三菱鉛筆 ピュアモルト4&1 0.7mm

    あまりにも書きやすすぎて、これがなければもう、手書きで筆記することができなくなってしまった。

    中毒性があるから注意。

    赤青緑黒の4色ボールペンにシャープペンシルという、どこにでもあるようなスペックだが、手触りから本体の重心、そしてなによりボールペンの芯のクオリティが明らかに他のものとは違う。

    これよりも良い物を見つけたら教えて欲しい。


    コクヨ 鉛筆シャープ 0.9mm

    鉛筆書きしなければならない状況というのは、いまそんなにないのだが、TOEICのマークとか、資格試験とか、ときどき必要になる。

    0.9mmを使えばすべて問題は解決する、という発想の逆転に、恍惚としてしまった。

    コクヨ製だから、とうぜん書きやすい。


    コクヨS&T プラスティック消しゴム リサーレ

    世界でもっとも消しやすい消しゴム。

    上記の0.9mmシャープとともによく使った。

    消しカスがたくさん出るが、丁寧に消さなければならない時は、大きな時間短縮が得られる。

    関連記事
    スポンサーサイト
    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
    http://orangeprose.blog.fc2.com/tb.php/868-f8634660

    トラックバック

    コメント

    コメントの投稿

    コメントの投稿
    管理者にだけ表示を許可する

    Appendix

    counter

    FC2ブログ

    ブログ

    リコメンド




    ノートンインターネットセキュリティ


    ブログランキング

    QRコード

    QR

    メールで更新を受け取る



    提供:PINGOO!

    ブロとも申請フォーム

    この人とブロともになる