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    催眠とコミュニケーションおよび心理療法(2)

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    催眠とコミュニケーションおよび心理療法(2)


    (承前)

    昨日、

    最近、中井英史『人の心を操る催眠術「ブレイン・ハック」』(フォレスト出版)を読んで、なんだか複雑な思いをしたので、ちょっと文章を書いてみたい。

    という書き出しでこの文章をスタートした。

    昨日は、「古典ヒプノ」と「モダンヒプノ」の区別だけして終わった。もう一度整理すると、「指示的(directive)」な催眠誘導をするのが「古典ヒプノ」、「非指示的-間接的(indirective)」な催眠誘導をするのが、ミルトン・エリクソン以降の「モダンヒプノ」。


    もう少し解説めいたことを書いておくと、「催眠誘導することの目的」は、「トランス」へと被験者(クライアント)を導くことだ。

    • トランスとは、日本語で「変性意識」と訳される、知覚と意識の変容した心理状態である(altered state of consciousness)
    • 催眠誘導とは、トランスへと導くことである
    • 催眠状態とは、トランス状態のことである

    「変性意識」などとごってりした訳語を使うと、いかにも非日常的な感じがするかも知れないが、催眠療法家に言わせれば、「人間は1日10回はトランスに入っている」。ぼくもこれは事実だと思う。

    朝目覚めたばかりで意識の輪郭がぼやけているような時、なにかに熱中していてふと気が付くと日が暮れていた時、逆に退屈な授業を受けていて何度時計を見ても時間が進んでいない時、一目惚れした時、セックスしている時――こうした日常生活によくあるできごとにおいて、私たちはトランスに入っている。ビル・オハンロンは「鍋を見つめていると、お湯が沸かない」とこうした事態を表現した。

    私は、カウンセリング・セッションを行っている時、九割九分はトランスに入っている。残りの一分は、「そういつもうまくいくわけではない」ということになる(体調や精神状態によるのではない。クライアントとのボールの投げ合いがスムーズにいかないときも、まれにあるということ)。


    昨日、「ミルトン・エリクソン以来、催眠と心理療法は切っても切れないものになった」と書いたけれど、一般的には催眠(トランス)を用いないとされている、カール・ロジャーズのような療法家でも、クライアントをカタルシスへ導く時には、トランスを利用していたのだというのがぼくの考えだ。

    なにより、ロジャーズの考案したエンカウンターグループは、(どちらかというと古典的な)トランス誘導の舞台装置そのものである(アメリカの映画にアルコール依存症のエンカウンターグループがよく出てくるが、ああいうものを想像して欲しい)。



    なんでこんなに長い前置きを書いているかというと、どういうわけだか、日本人の催眠療法家が書く著作は古典ヒプノにもとづくものばかりで、モダンヒプノを論じた著作が圧倒的に少ないという謎現象をどう説明すればよいのか、ぼく自身がよく理解できていないからだ。

    このように言うと、一部から「そんなことはない。書店の自己啓発系のコーナーではNLP(神経言語プログラミング)のテキストが幅をきかせている」と反論する声が聞こえる。

    NLPは、そのひとつの源流をミルトン・エリクソンに持っている。ぼくはしばしば「NLPはエリクソンをレジュメ化した」という言い方をするのだが、NLPによるレジュメ化のおかげで、エリクソンが使いやすくなったのは確かだ。

    しかし、NLPのテキストをいくら読んでも、エリクソンが何をしていたのかは、まったくわからない。そこには、エリクソンが為した決定的に重要なものが欠けている。それは、「トランス誘導」と「コミュニケーション」との、複雑に絡まりあった、エリクソン独特のコミュニケーションに対する「態度」だ。


    NLPが、トランスを必要と考えているのか、不要と考えているのかは、わからない。どちらとも決めかねている、というのがNLPの実情ではないだろうか。NLPのテキストを読んでも、トランス誘導ができるようにはならない(ほとんどの場合)。しかし、NLPのセミナー(何十万円もする自己啓発セミナー)では、参加者をトランスに入れるようなセッティングが不可欠のようだ。NLPが、NLPを通して、そのユーザーにトランスとどのように関わって欲しいのかが、見えてこない。「トランスに入る」ことは求めるが、「トランスに入れる」技術は身につけて欲しくないと考えているかのようにもみえる。

    もちろん、英語圏で、エリクソンの逐語記録を読み、グリンダーとバンドラー(NLPの創始者たち)によって言語分析されたエリクソンについてのテキストを読めば、エリクソンのトランス誘導について多くのことを学ぶことができるだろう。しかしそれも、1970年代までの話で、「自己啓発セミナーに堕落した」NLPでは、グリンダーとバンドラーに立ち返ることは、「腫れ物に触ること」のように扱われているようにみえる。

    (これには、グリンダーとバンドラーが80年代には喧嘩別れをして、共同研究をやめ、90年代には訴訟合戦になり、2000年にようやく「和解」することになった、というやっかいな事情があり、むしろ「堕落したのは創始者たち」という見方がNLP界隈では多勢を占める。そうは言っても、第二世代や第三世代のNLPが「自己啓発セミナーにすぎない」のは確かなのだが)

    こうしたNLPの「どっちつかず」の態度は、エリクソン的催眠の、決定的に重要な、次のことを理論的に説明できていないことから生じている。

    • 催眠誘導のスキルとはコミュニケーション・スキルのことである

    これは、もっとも単純に理解すれば、2つの意味に解釈できる。

    第一に、エリクソンの催眠誘導は「指示」(「あなたはだんだん眠くなる」とか「目を閉じてください、リラックスして、深呼吸しましょう」など)によってではなく、「コミュニケーション」によってなされる、という意味。ビル・オハンロンは、「非指示的〔間接的〕(indirective)指示(direction)」というパラドキシカルな呼び方をしていた。

    確かに、エリクソンのセッションのテープ起こしなどを読むと、エリクソンはクライアントになんの指示も出さず、ただ暗示に富んだ逸話を語って聞かせているだけである。「あなたがすぐにトランスに入るのか、それともゆっくりとトランスに入っていくのか、私にはわかりません……」というようなエリクソン話法である。

    こうしたことは、NLPでレジュメ化されている「ミルトンモデル」でも記述されている。それにもかかわらず、エリクソンのやっていることの決定的ななにかを欠いているのは、次の第二の意味との関わりを、見失っているからだ。

    つまり第二に、一般に「コミュニケーション・スキル」とよばれているものは、「催眠誘導のスキル」のことである、という意味。

    これを、よりわかりやすく敷衍して言えば、「コミュニケーションとは、相手をトランスに入れたり、自分がトランスに入ったりすることである」とでもなるだろう。


    NLPのテキストでも、「ミルトンモデル」を使った「一般的」コミュニケーションについて語られている。「一般的」な「普通の」コミュニケーションにおいても、エリクソンの使った催眠誘導や暗示のテクニックを使えば、相手を気分よくさせることができて、うまくいく、とかなんとか。

    つまり、NLPにおいては、「トランスに入れる(入る)」ことと、「普通のコミュニケーション」が区別されている。

    トランスに誘導しないような「普通の」ケースでも、エリクソンのテクニックは有用ですよ、というわけだ(だからビジネスパーソンや育児中の親などに普及した)。

    ここに決定的な違いがある。

    エリクソンは、「普通のコミュニケーション」と「トランス誘導」とを区別などしていなかった。彼は、24時間、いつでもどこでも、誰かをトランスに入れていたか、自分がトランスに入っていたか、あるいはその両方であった。郵便配達員をもトランスに入れていた。


    気の合う仲間と喫茶店でおしゃべりしていることを想像してもらいたい。気づいた時には日が暮れている。しかし、そこで何をテーマにおしゃべりしていたのか、まるで覚えていない。ただ、気分が良かった、ということだけ覚えている。「毎日、こうやって無駄な時間を過ごしているね」と言い合うが、笑みがこぼれる。

    これがトランスだ。


    (続く)


    今日の詩篇

      谷川俊太郎

    権威は
    どこにも
    ない

    ただ
    剥き出しの
    性器が

    立っている
    凹んでいる


    既にかすかな
    偽りの


    (詩集『minimal』)
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