Entries

    表現光線

    曼珠沙華

    とても細かいことを思い出した。さっき。で、なんかもやもやしている。なので、もやもやしたまま、そのことを書こうと思う。昔、大学生の時、当時の恋人と帝釈天に行った。あの、寅さんの。葛飾柴又。僕は大田区か品川区に住んでいて、ちょっとした遠出で、ちょっとした観光。当時、デジカメって一般には普及してなくって(Windows95が出るちょっと前だったと思う)、「写ルンです」という使い捨てカメラが売れていた。たぶん彼女の方は、何かマニアックなフィルムカメラを所有していたと思うけど、そのときは、観光気分でぷらっと立ち寄っただけだったし、写ルンですで十分だと思った。そういえば荒木経惟がコニカのビッグミニを使ったので、翌年辺りに猫も杓子もビッグミニになった。その彼女もビッグミニを持ってヨーロッパ旅行に出かけた。柴又に話を戻すと、僕はたぶん長髪で、肩より長いぐらいで、後ろで縛ってた。その子の僕に対する第一印象は「チャラいやつ」だったそうだ。長髪でニット帽かぶってたから。僕のその子への第一印象は「あーはいはい、ネオアコ少女ね。『Olive』とか読んでるんでしょ」というものだった。そういえば『Olive』って今は無いんだよね。不思議な感じがする。


    また帝釈天に話を戻すと、いろいろ撮った。2人で並んで帝釈天の前でその辺のおっさんに撮ってもらったりもした。そんで、その日は別にどうということもなく、帰宅した。カメラは、たぶん使い切って、カメラ屋に現像しにいかないとなあ、と思いつつ、テレビの上かなんかに置いておいた。それから数ヶ月過ぎ。そのカメラが現像に持ち込まれる機運がまるで高まらなかった。理由は分からない。何が写っているのか、記憶に鮮明で(たぶん)、現像するまでもないよね、という感じだったのかもしれない。と、ここまで書いて、ひょっとしたら僕がいま考えている「あのカメラ」は、その数年後に別の人と使った使い捨てカメラではなかったか、という疑いが浮上してきた。あれ? 誰と帝釈天に行ったんだっけ? この問題ももやもやしてきた……ともあれ、とにかく、現像されないままの使い捨てカメラ(使い切り済み)が、あった。誰と写っているのかは、ともかく。


    数年過ぎ、もしかしたら10年以上過ぎ、そのカメラは行方不明になった。どこかのタイミングまでは、そのカメラはたしかに存在していた。実家に帰ってくる以前に、僕は何度か引越をしているのだけど、いずれかの引越で、なくしてしまったのかもしれない。ボロボロになりすぎて、誰かが捨てたのかもしれない。段ボール箱の奥底にあって、いま僕がこの文章を書いている部屋に、じつはあるのかもしれない。あのフィルムは現像すべきだったのだろうか。写真は、かたちになると、家族写真などは別として、じゃまになることが多い、気もする。デジタルだと何万枚あってもかさばらないし、重要なものも、そうでないものも、等しく平等にデータとして残すことができる。消すこともできる。だから、じゃまになるはずの、ようするに、俗っぽい言い方をすると「昔の女」の写真なんかは、どうせ捨てるのだし、現像しなくてよかったんじゃないか、とも考えられる。


    それで、何にもやもやしているのかというと、現像されていないのに、その写真がじゃまになる(ようするに特別な価値のない、いっときのコミュニケーションツールにしかならない写真になる)かどうか、分からないじゃないか、みたいなことなのかな。分からない。ええっと、こう、箱があって、そこに箱を開けると稼働する仕掛けみたいのがあって、箱を開けるまでどういう仕掛けなのか、誰にも分からない、という状況があったとする。思考実験として。通常は、仕掛けた誰かがいるはずなので、現実にはありえない話だけど。その箱が偶然、行方不明になった。その箱は何を思うか、みたいな、いやあ、余計にわけがわからない比喩になった。たんじゅんに、昔の自分の写真をもっと撮っておけば(取っておけば)よかった、みたいなことも思う。あったらどうなんだ、と言われても困るけれど。昔のとんねるずのコントだったような気がするのだけど、おじいさんとおばあさんが、使い捨てカメラを買って、これ使い捨てカメラっていうんだよね、かなんか言いながら観光地で記念撮影して、これ使い捨てカメラだから、使ったら捨てるんだよね、って言って、撮ってすぐにゴミ箱に捨てて帰る、と言うものがあった。この、撮ったのに現像されずに捨てられるカメラ(厳密に言えばフィルム)、というイメージにも、もやもやするものを感じてしまうのだけど、こう感じるのはこの世で僕だけなのだとしたら、なにか、こう、もやもやする。


    カメラは密閉された部屋で、世界の総体の隠喩になっている、ということが関係しているのかもしれない。

    関連記事
    スポンサーサイト
    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
    http://orangeprose.blog.fc2.com/tb.php/2061-e7d9eb48

    トラックバック

    コメント

    コメントの投稿

    コメントの投稿
    管理者にだけ表示を許可する

    Appendix

    counter

    FC2ブログ

    ブログ

    リコメンド




    ノートンインターネットセキュリティ


    ブログランキング

    QRコード

    QR

    メールで更新を受け取る



    提供:PINGOO!

    ブロとも申請フォーム

    この人とブロともになる