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    どっちみち

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    トム・ジョーンズの『拳闘士の休息』を読む。レイモンド・カーヴァーの『大聖堂』を読む。10月に入ったら、むさぼるように小説を読むのだろうなあ、と予想していた。とここまで書いたところで、耐えきれなくなった。なぜなら今書いたことは嘘だからだ。嘘は苦手だ。本当はもっと前に読んだ。どうして覚えているのかというと、カーヴァーの「足もとに流れる深い川」を久しぶりに読んだ、何度読んでも初めて読むような印象を受ける、というような文章の断片が、Microsoft OneNoteにページとして残されていて(EvernoteからOneNoteに移行している途中だ)、日付も時刻も残っているからだ。だから厳密に言うと、覚えてはいない。記憶はすべてクラウドに委託してしまっている。僕の記憶力には致命的な欠陥がある。と思っている。自覚したのはたぶん大人になってからだけど。記憶は嘘をつく、ということを学んだのはもう少しあとになってからだ。


    そのときには短編小説を書いていた。だいたい100枚ぐらいの。小説を書いている時期には、できるだけ文章を読まないのが一般的だと思うのだけど(村上春樹がそう書いていたから、それが一般的だと思っているだけで、村上春樹が例外なのかもしれない)、小説というものが一体どんなものであるのか、ということを僕はけっこう忘れてしまうので(ほら、記憶に欠陥があるから)、必要になって読んだのだと思う。思う、と曖昧なことしか言えないぐらい、記憶力に致命的な欠陥がある。でも結局、そのとき書いた小説は、グレイス・ペイリーの影響をモロに受けているような体裁になった。文体もモチーフも、作品の与えようとしている印象も、まるで違うのだけど(そこまで影響を受けたら自分の作品じゃなくなってしまう気もする)、セリフは括弧に入れないとか、三人称で書くとか、そういう「体裁」の部分での影響を受けた。セリフが括弧に入っていないので、一般的に言うなら、非常に読みにくいものになったと思う。


    書いた、ということを覚えているのは、Googleカレンダーにそう書いてあったからで、やはりクラウドに頼らないと、記憶も曖昧になる。という言い方も変か。記憶は曖昧どころか、ほとんどない、というのが正しくて、記憶の代替物はしっかりしている。便利な世の中になったものだ。クラウド化した世の中が到来していなければ、僕は今頃生きていたのかどうか、いやはや、恐ろしい。というのも嘘で、恐ろしくはない。むしろ、翌日も自分が生きているだろう、という予感とか、推測みたいなものも、僕にはまるでなくて、夜寝るときはいつも、このまま目を覚まさないのだろうなあ、と思いながら寝る。だから、目が覚めたときに、自分が生きていることに気づいて、驚く。もう分かっているとは思うけど、これも嘘だ。あまり驚かない。起きて2、3時間たって、ああそういえば生きてるなあ、と思うぐらい。もちろん、ほんとうに生きているのかどうか、確信は持てないのだけれど。


    去年の秋から今年の3月にかけて、200枚オーバーの小説を書いていた。これもGoogleカレンダーに書いてあったから、間違いないと思う。これは前半の3ヶ月はひたすら設計図の制作にいそしんでいて、後半の3ヶ月が実際に執筆していた時期だった。と思う。これは記憶に頼っているので、自信はない。僕の小説執筆作法(というのも大げさな言い方だけど)は、設計図ドリブンライティングとでも言うべきもので、原稿用紙換算で何枚目にこのキーワードを配置する、みたいな細かいことをあらかじめ決めてしまうし、X枚目までの構造をY枚目から反復するとか、反転させてシンメトリー構造にする、とかを考える(この設計図ドリブンは、200枚以上ぐらいで使う。100枚だと、一応作るけど、結局無視する)。一般的には、プロットとかあらすじとかログラインとか、いわば「表の」ストーリー(構造)を、小説家は書き留めておくものだけど、僕は直接的には物語には現れてこない「裏の」構造も書く。図形とか、詩や俳句からの引用とか、曲のタイトルとか、そういうものを配置していくのも楽しい。ま、あたまおかしい、と言えば、それまでですが。


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