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    [書評]又吉直樹&堀本裕樹/芸人と俳人

    落葉

    この文章を書いている今は、【年の暮】である。

    【数え日】となった感慨、というものもまるでないのだけど、今年を振り返ってみる。

    とくべつ、毎年必ず新しいことを始める、と決めているわけでもないのに、必ず新しいことを始めているように思う。

    何か始めよう、と思うと構えてしまって結局長続きしないが、自然に向こうからふらりとやってくるものに身を任せていると、いつの間にか続いていたりする。

    今年始めたのは俳句と筋トレ。

    筋トレは、東京時代にはスポーツクラブの会員だったこともあって、何とはなしにやっていたのだけど、そこには「東京だし、忙しいし、部屋狭いし」という言い訳があった。

    都落ちしてからは、暇だし、家の中も外も広いし、体力維持するためにスポーツクラブに行ったら負け、と思っていた。

    でも田舎って、過剰なまでに車社会で、コンビニに行くにもめんどくさくて車を出したりする。

    私鉄をガンガン乗り換えて移動する東京と比べて、田舎では運動量が格段に落ちる。

    そんなわけで、スポーツクラブの合理性・効率性に負けてしまった。


    俳句をなんで始めたかというと、いくつか理由はあるのだけど、今言えることをかいつまんで言うと、短歌に挫折したからだ。

    穂村弘『短歌という爆弾』を読んで、挑戦してみようと思ったのだけど、五七五七七の七七がどうしても埋まらない。

    やろうとすると説明的になってしまうし。

    なんでこんなに苦労してまで定型に収めなきゃならんのだ、もう自由律でいいじゃん!

    などと思っているうちに、俳句に行き着いた。

    はじめはちゃんとした歳時記も持たずに、Webの歳時記(きごさい)を頼りに、いくつか作ってみたら、これが面白い。

    そこで「きちんと入門してみよう」と考え、藤田湘子『20週俳句入門』を買って読んでみた。

    これがよかった。

    藤田湘子『20週』は、ほとんどの人が「最強の入門書」と考えるらしく、ここから入門したのは幸いだった。

    これ以外にも俳句入門書を手当たり次第に読んでみたが、これを超えるものはまず、存在しない(現時点で)。

    何が他と違うか。ちょっと引用してみる:

    (…)ここで、虚子のように、「五・七・五で、季語と、『や』『かな』『けり』のどれか一つを用いて作ってごらんなさい」と言いたいところだが、そう言われても、「さあ、どこから手をつけたらいいか分からない」というのが落ちであろう。

    じつを言うと、現在百種類ほどの俳句入門書があるが、大方はここのところがアイマイになっていて、「まず第一作はこうして作りなさい」という手ほどきが示されていないものが多い。けれども、まったくはじめて俳句を作ろうとしている人が、一番教えてもらいたいのが、ここのところなんですね。

    (藤田湘子『新版 20週俳句入門』(角川学芸出版))

    そうそう、そうなんですよ、「さあ自由に」などと言われて大海原に投げ出されるのが、初心者にとっては一番困るわけ。

    ようは〈守破離〉であって、「自由さ」は、型が身体に染みこんで以降の話なんだよ。

    短歌版の『20週』があったら、ぼくは短歌に行っていただろうなあと思う。

    「手当たり次第に読んだ」俳句入門書の一つに、千野帽子『俳句いきなり入門』があるのだけど、千野帽子も『20週』で入門したと書いている。

    句会初日に、職場の句会のSさんという女性から二冊の本をもらった。藤田湘子の『20週俳句入門 第一作のつくり方から』(立風書房、一九八九)と小林恭二の『俳句という愉しみ 句会の醍醐味』(岩波新書、一九九五)だ。

    藤田湘子の『20週俳句入門』は、「あなたの思いを一七音にしてみませんか」的なナマヌルな精神論はいっさい抜きで技術の基礎の基礎を体系的に叩きこむ、無駄のないかなり優れた実作の入門書だ。ポエムな自己満足が入る隙間のない、技術論に徹した基本エクササイズがいろいろ書いてある。

    (略)

    つまり「作る」ための一冊と、「読む・語る」ための一冊をもらったことになる。俳句本がこんなにおもしろいのかと感激した私は、その後の一年間で、入門書を始めとする俳書をだいたい週一冊、年間で五〇タイトル以上読んだが、この二冊に匹敵するおもしろさのものはなかなかない。Sさんのセレクトは完璧だったのだ。

    (千野帽子『俳句いきなり入門』(NHK出版新書))

    と、まあ、絶賛である。

    入門書なのに入門書を推薦する本もなかなかないのだけど、千野帽子がすすめるように、藤田湘子のものと、坪内稔典、阿部ショウ人(*ショウは竹冠に小に月)のものは欠かせない。

    というか、入門者は、千野帽子やぼくがやったみたいに、とにかくたくさん俳書を読んでみるのがよいと思う。

    ぼくが言うのもおこがましいけど、こりゃつまらん、だめだ、という入門書であっても、どこか一文ぐらい、必殺の奥義が書かれていたりする。


    千野帽子の『いきなり入門』は、とにかく句会をやろう、と呼びかける本だから、小林恭二の句会本は重要文献ということになるのだろう。

    もちろん『俳句という愉しみ』は素晴らしい本だ(絶版だが)。

    でも、参加者が有名な俳人ばかりだし、初心者が読んでも、仙人の領域を覗くような感じで、自分事として感じられないおそれがある。面白いけど。

    とはいえ、句会の実況本なんて、そうそうないしなあ。。。

    と、そこに、今年出た『芸人と俳人』ですよ。

    『芸人と俳人』は、はじめ読んだときは、これも「第一作をどうするか」がアイマイだし、どうかなー、これを読んでも作れるようにはならないよなあ、と思っていた。

    のだけど、第一作はもう、藤田湘子でなんとかしてください。

    又吉直樹の文芸的努力と俳句的感性はおおよそ誰もが認めるところかもしれないが、この本の見どころは、堀本裕樹のコーチとしての才覚が遺憾なく発揮されているところ。

    本書は全10章から成っており、それぞれの章が、マンツーマンの俳句指導になっている。

    第10章は指導に及んだ2年間を振り返っての対談だから、実質、全9回の指導が行われたことになる。

    が、第8章の「句会」と第9章の「吟行」から判断するに、又吉は完全に「入門者」を脱しており、期間としては2年と長いとはいえ、回数だけ見るならほとんどブリーフ・コーチングの域といえる。

    まあ、そりゃあ、有能な俳人につきっきりで2年間指導を受けたら、誰でも「俳句っぽい俳句」が書けるようになるよ、という意見はそのとおりなのだけれど、それでも、相手(被指導者)に合わせて、うまく伴走していくタイプの指導(それを通常コーチングというわけだけど)は、一回性のものであり(つまり誰に対しても同じ指導をすればよい、というものではない)、俳句や文芸に限らず、いわゆる「教育」に携わるなら、得るところが大きい書物と言える。

    「第一作をどうするか」については、又吉直樹がそこで躓かなかったというだけなのだと思うけど。


    そういう意味で、『芸人と俳人』は、俳句に入門して2冊目に読むべき本だと思う。

    本書には、「句会」も「吟行」もある。

    とくに句会は堀本・又吉に加え、ぼくらの穂村弘と、藤野可織・中江有里の2人が参加していて、なんというか、理想的な句会、考えうる最上の句会だと思う。

    藤野可織の句がとてもいいと思った。

    句集を出して欲しい。

    藤田湘子は、俳句専門誌に投句すべし、と書いている。

    無料で投句できる専門誌としては、角川の『俳句』NHKの『NHK俳句』がある。

    「無料で」というのは、ほとんどの場合、俳句には「投句料」がかかるのだ。

    ときどき大きなスポンサーがついているところが投句料なしで募集したりするけど、1年に1回とかだ。

    NHKの選者には、今ならあの池田澄子先生も名を連ねている。

    でもNHKのは、テレビ番組と連動だから、季題が1シーズン先なんだよね。

    そこは紛らわしいと思う。

    それから、堀本裕樹と又吉直樹が主催している「夜の秘密結社」のメルマガでも、募集している。これは2ヶ月に1回ぐらい。

    ちなみにぼくがはじめて「佳作」をいただいたのも、「夜の秘密結社」だった。

    ビギナーズラックかもしれないけど。


    入門書

    歳時記/季寄せ

    文語表現で書くなら

    歴史的仮名遣いで書くなら

    上述の『ベネッセ全訳』の巻頭付録に、歴史的仮名遣いの総まとめみたいなのがある。

    雑誌
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