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    150年目のアリス、ベストの記念本は……

    alice

    今年は『不思議の国のアリス』(Alice's Adventures in Wonderland)刊行150周年のアニバーサリーで、ぼくもアリスおたくのはしくれとして、丁寧にいろんな訳書を読み返した。

    どういうふうに丁寧に読み返したかというと、全訳ではないにせよ、私訳を作ったりした。

    もちろん、アリスおたくというものは、たいてい、過去に「アリスの翻訳」という難事業に勢い勇んで取り組んで、すぐに挫折する、という経験をしている。

    ぼくもそうだ。

    で、今回は、前から順番にではなく、後ろから、つまり第12章の「アリスの証言」のシーンから訳したりしてみた(まあ、個人的に、とある事情で必要になったからなんだけど)。

    で、第12章を訳してみて思ったんだけど、一般的に、アリスの翻訳の不可能性っていうのは、英語のダジャレとかの部分だと思われている。

    もちろん、第12章にもそういう部分は目立って存在しているんだけど(王様が「ダジャレじゃ!」って怒るでしょ)、なんていうか、地の文、っていうのも変だけど、ダジャレじゃない部分も、なにかと、ヘンテコである。

    アリスがへんてこなお話だなんて、何を当たり前のことを言っているんだと思うだろうけど、翻訳だと「ふつうに」「すんなり」読んでいた部分にも、翻訳しにくい、変な部分がいっぱいある。

    このなんとも言い様がない気分を説明するのはとても難しいのだけど、アリスの面白さは、翻訳しようとしてみたときに、すごく深く把握できる、ということを、今年は把握した。

    今年はどっぷりアリスに浸かった/漬かったので、すごく影響を受けた。

    どういう影響を受けたかというと、筋トレを始めた。

    スポーツクラブに入会して。

    どういうことかっていうと、『不思議の国』でアリスは拡大したり、縮小したりするでしょう。

    ジル・ドゥルーズも、一冊のアリス論と言える『意味の論理学』で、「縮小と拡大は同時である。拡大しつつ縮小しているのであり、縮小しつつ拡大しているのである」(大意)って言ってるでしょ。

    もちろんこれはパラドクスについての話で、sense(意味=方向)がひとつしかない、制限された領域(物体的なもの)と、そうでない、同時にふたつのsenseを持つ領域(効果・動詞的なもの)との区別があって、ドゥルーズはアリスの身体が大きくなったり小さくなったりするところにさえパラドクスを見出しているということなんだけど。

    フェミニズム批評だと、アリスの身体が大きくなったり小さくなったりするのは、女性の身体の変化に対する不安のメタファーということになる。

    今年、アリスを読んでいて、そういえば、ぼくは2年前に「からだの縮小」――ようするにダイエット――には成功したけど(半年で20kg落とした)、「からだの拡大」にはまだ成功してないよな、と思ったのだった。

    からだの「嵩」を減らしたときは、いわゆるコンフォートゾーンを「体重が減っていくルーティーン」に設定して(「スリムな自分」というセルフイメージではなく、ルーティーンに設定するのがコツ)、自分の生活をそのルーティーンの中にはめ込んでしまって、自動的に体重が減るようにしたら、自動的に減った。

    まったく意志の強さも努力も必要なしにうまくいったので、同じ方法を、「からだを大きくしていく」ことにも採用した。

    まだ始めてから1ヶ月半ぐらいしかたっていないので、見た感じは変わってないけど、筋繊維がオールアウト(筋トレマニアの最近の専門用語)しないと気分が悪い、っていうコンフォートゾーンができあがったので、たぶんうまくいくんじゃないかな。

    今年はそんなわけで、アニバーサリーなので、いろいろアリス関連グッズが出た。

    翻訳もいくつか出ていて、本格的なところだと、高山宏・訳、佐々木マキ・挿画、というすごい本も出た。

    ユリイカの臨時増刊号『150年目の『不思議の国のアリス』』には柴田元彦による第1章の訳があったり、若島正によるナボコフ論(アリスの観点からみた『ロリータ』)があったり、賑やかだけれど、いろいろ寄せ集めすぎという感がある。

    他にも特筆すべきものはたくさんあるのだけど、個人的に、これがベストだろう、というのが、『不思議の国のアリス ビジュアルファンBOOK』(マイナビ)だ。

    本書は前半と後半から成っていて、前半には『不思議の国のアリス』の原文・翻訳の全文が載っている(新訳)。

    アリスの翻訳には、テニエルの挿画を使うのであれ、新進気鋭の絵師を起用するのであれ、挿絵がつきものであるが、本書では30名のクリエイターが担っている。

    そして、その挿画の「アリス役」を深澤翠が担う。

    はっきり言うなら、深澤翠の新しい写真集のつもりで買うといいと思う。

    30名のクリエイターは、それぞれの表現で――イラスト・切り絵・クレイアート・アクセサリー・お菓子、エトセトラ――『不思議の国のアリス』の世界を表現しているのだけど、その中に必ずアリスのコスプレをした深澤翠が存在していなければならない。

    そういう「縛り」で表現されている。

    深澤翠が着ているのだから、それはもはや「コスプレ」ではない、のかもしれないけど。

    本書後半にはちょっとしたガイド(初心者向け)もあるので、アリス入門として最適ではないだろうか。

    えーと、ほんとは「アリスの翻訳」というテーマで少し書こうと思ってたんだけど、長くなりそうなので、別記事にする。

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