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    合格する入試小論文を書けるようになる:week6

    Vantilator

    第6回。

    いままでの目次:


    前回「論点を創るトレーニング」に触れて、今回「結論を創るトレーニング」に触れる。

    ということは次回は「論拠を創るトレーニング」に入るのだけれど、繰り返し言ってきたように、【論拠が小論文の得点を決める】のだから、ここに残りのすべてのレッスンを使う。

    小論文という入試科目が何を求めているかがわかったら、あとはとにかく【インプット】と【アウトプット】の繰り返しである。


    【インプット】で生じた疑問をそのまま論点にして、答案練習をするのももちろんだが、【テーマ】あるいは【トピック】ごとに整理して、バインダーノートにまとめるのも【アウトプット】の重要な作業だ。

    ちなみに、なぜバインダーノートがよいかというと、いちど整理したトピックは、あとからどんどん膨れ上がっていくからだ。

    「医療倫理」というトピックで2ページぐらい書いて、次に「環境問題」というトピックでまた2ページぐらい書いて、とやっていくうちに、また「医療倫理」について、細かいことを付け足したくなる。その場合、バインダーノートなら、用紙を挿入すればよい。


    【テーマ】や【トピック】(あるいは【主題】)については、このシリーズでは、代表的なものしかとりあげない。すべての学科に対応するのは50回の連載では不可能だからだ。

    じゃあ、触れられなかった【テーマ】や【トピック】についてはどうすればよいのか。

    ひとつには読書によって。テレビや新聞やインターネットのニュースによって。『現代用語の基礎知識』によって。

    ただし、闇雲に情報収集していても、効率が悪い。

    とりあえず、小論文が試験科目にあるすべての受験生は、次の参考書を手元において欲しい(おそらくこのシリーズで初の必須指定文献だ)。


    • 『ワークで覚える小論文頻出テーマジャンル別キーワード93』(桐原書店)

    おそらく、この『キーワード93』でも、トピック数としては足りない。

    念の為に言っておくと、すべての受験生がこの93個のキーワードについて論じられるようになる必要はない(なったほうがいいけれど)。

    受験校や受験学部によって、出ることが多いトピックと少ないトピックの違いがあるからだ。「関心のあるトピック」からはじめるのがよいのは言うまでもないが、「なにから手を付けてよいのかわからない」と迷ったときは「よく出るトピック」からはじめよう。


    受験科目は小論文だけではない。なによりも英語や数学のような「できなければ致命的になる」かつ「実力が確実に身につくのに時間がかかる」科目に時間を最大限使うべきだ(じつは小論文のトレーニングがこれらの主要科目の実力を向上させるのだが、それについてはおいおい説明する、かもしれない)。

    とはいえ、まずはこうした参考書をとっかかりに、調査・研究を進めていけば、おのずと「何をどこでどうやって調べればいいのか」がわかるようになるはずだ。


    これからも必須指定文献や、読むとためになる文献を紹介したい。

    今日のレッスンに入ろう。


    レッスン6

    問題6:次の文章は「レッスン5」の続きの文章である。これを読んで、あとに続く問いに答えなさい。


    前回は【論点】を創るトレーニングについて解説した。

    もう一度、論点を創り出すポイントを掲載しておく。

    1. 著者が直接文章の中で問いかけていること。
    2. 著者が「前提」にしている問題。
    3. 著者が直接述べてはいないけれども問題になりそうなこと。
    4. 著者の論拠や論理展開におかしなところがないか。
    5. 著者が話題にしていることに関連しそうな問題。
    6. 文章を読んで感じた、腹の中の「ひっかかり」。

    (句読点や括弧の位置を若干変えた)

    論点づくりトレーニングは、このすべての項目について、日常的にやって欲しいと、前回述べた。

    1日10個創れば、1週間で70個できる。1年だと3500個以上できる。

    「バインダー」がどんどん分厚くなっていくのがわかると思う。


    そして、このリストのうち、6番目のものを大事にして欲しい、とも述べた。

    論文を書くことをうながす【根本的な欲望】は、【言葉にしていなかったけれども人に伝えたい思いを、言葉にして、相手が納得のいくように、筋道を立てて説明したい】というものだからだ。

    ぜひともあなたの欲望を成就させよう。


    前回の「問い」を見よう。

    問い5:上の文章中に、「架空の経営者」のエッセイがある。これを読んで、自由に【論点】を設定しなさい。最低6個、上限はなしとする。さらに、それぞれの【論点】について【結論】を書きなさい。文字数に制限はない。【論拠】は書かなくてもよい(書いてもよい)。


    「架空の経営者」のエッセイとはどのようなものだったか。

    これももう一度見てみよう。


     私はネジ工場を長年経営してきた。不景気な時期にも、一貫して新卒一括採用を行ってきた。しかし、年々、採用する学生の質に、疑問を感じるようになってきた。リクルートスーツをビシッと着こなして面接に挑み、いかに弊社に魅力があるかを熱く語った学生も、3年もたたずに転職していくことが多くなった。転職する理由を聴いてみると、「やりたいことが見つかった」からだという。君はうちで働くことが「やりたいこと」だったのではなかったのかね? と問いただしたくなる。しかし、彼らは彼らで、なんとか「新卒」で正社員になりたいと、必死で就職活動したのだろう。彼らには、「新卒で正社員」になれなければ、人生お先真っ暗、という圧力がのしかかっていたのだろう。「やりたいこと」など、就職活動中には、見つかるものではない。うちの工場で働いて、「何か違う」と冷静に考え始めたのだろう。それはそれで結構なことだとは思う。しかし、新入社員を採用する側にとってみれば、なんのための採用活動だったのか、とがっかりしてしまう。入社して3年では、まだ「ネジづくり」の基本の基本さえ身についていない。彼らに3年間給料を払ってきたのは、将来、使える社員になるだろうという、「投資」でしかない。正直言って、彼らの転職は、我々経営陣にとって、投資の失敗なのだ。「給料泥棒」という悪い言葉もあるが、怠け者のK君(高卒の、入社12年目の中堅ネジ職人だ)なんかよりも、大学を卒業して入社し、3年もたたずに退職していく彼らのほうが、よっぽど経営にとってダメージだ。そこで、弊社では、昨年限りで新卒採用をやめることにした。そのかわり、学歴などなくとも、コミュニケーションスキルなどなくとも、「ネジづくり」にかける情熱にあふれる人を今年から採用することにした。若者にかぎらず、中高年や、ずっとアルバイトしかしていなかった「ニート」とよばれる人たち、日本に夢を抱いてやってきた外国人。彼らは、一見パッとしないが、ネジを愛している。怠け者のK君も、しょっちゅう遅刻はするし、モゴモゴと口ごもるようなしゃべり方でなにを言っているのかよくわからないのは、困りものだと思うのだが、ネジについて語らせれば、目を輝かせ、熱い情熱を持っているのがわかる。そういうK君を見ていると、この工場も潰せないなと、経営陣の意欲も湧いてくるのである。


    これについて、先にあげた6つのポイントから【論点】を創っていけば、自動的に「最低6個」の課題はクリアできる。

    もちろん「6つのポイント」を網羅していなくとも「設問」「問い」の形になっていればオーケーだし、「6つのポイント」以外の観点から論点を設定できたら素晴らしいことだ。

    ただし、日常的に、「6つのポイント」を使って、このポイントを網羅するように論点づくりをやって欲しい。


    さて、【論点】にかんしては、じつは前回のレッスンの中で、すでに6つ紹介してしまっている。

    これを再利用してみる。

    • (1)採用する側にとっても就職する側にとっても幸福な雇用制度はどのようなものか。
    • (2)新卒一括採用制度の欠点はなにか。
    • (3)企業が求めている「コミュニケーションスキル」とはどのようなものか。
    • (4)採用基準が「情熱」だとしたら弊害はないか。
    • (5)すべての人が「働くこと」に情熱を持てるものだろうか。
    • (6)「怠け者」と言われるK君は、そもそもコミュニケーションスキルが高いのではないだろうか。

    (これも句読点をやや変えた)

    前回、この【論点】の設定の仕方のいくつかは、あまりうまくない、ということを述べた。

    まず、(1)のようにHOWないしWHATを問う論点は答えにくい。「幸福な雇用制度」という概念が漠然としすぎているからだ。少なくとも小論文の答案にはそぐわない論点だ。いや、これは専門家にさえ答えにくい問いだから、少なくとも試験のときは誰であれ避けるべき論点だ。

    (2)については「少し高級」と言った。しかしこれもWHATを問いにしているので、試験のその場で考えるのには向いていない。ただし、「新卒一括採用制度」に関して一家言ある、という人なら、入試会場で「よしきた!」とガッツポーズをとり(こっそりと)、この設問を立ててよい。

    (3)も「得点としては高い」と言った。2014年調査時点で、《日本の企業が採用選考時に重視する要素が10年連続で「コミュニケーション能力」だった》という「事実を知っている」ことをアピールできるからだ。これもHOWないしWHATが問いだから、(2)と同じく、得意ならば、こういう問いを立ててもよい。

    (4)はバッチリ、YES/NOで答えられる論点の設定で、「試験対策としては」よい。これは、課題文の筆者が依拠している「論理を疑う」ことによって導くことができる論点だ。論理を疑うところからしか、論理力は身につかないとも言った。だから、この6つのポイントをまんべんなく、日常的にトレーニングして欲しいのだ。

    (5)もYES/NO。ただし、いくら「試験ではYES/NOの論点に持ち込むのが必勝法」だからといって、自分で答えられない問いは立ててはならない(試験では)。ポイントの5つ目は、「関連する問題」を提示する、というものだが、このポイントが使い勝手がよいものだとすれば、「得意分野に持ち込める」からだ。もちろん、試験問題があらかじめ論点を設定しているようであれば、勝手に「関連する問題」を立てて、それに答えても、採点者から見れば「私が聞いていることに答えていない」ということになる。使えるのはケース・バイ・ケースだ。

    ポイントの6つ目は、これはもう、「あなたにとって切実な、のっぴきならない問題」なのだから、思う存分、羽根を伸ばして書きまくることができる。ただし、あなたが日頃から、「あなたにとって切実な、のっぴきならない問題」について、考えぬき、一定の結論を出していないのだとすると、せっかくこのような設問を設定しても、何も書けない、あるいはまとまりがない「ダメ論文」しか書けない、という事態に陥る。


    以上、論点の設定の仕方――言い換えれば「問い」「設問」の立て方――について、ごちゃごちゃと述べてきたが、ほとんどの説明において「試験では」という修飾語がくっついているのに気づいただろうか。

    これは言い換えれば、日常的にはこういう問いの立て方を、「意識的に」やるべきだ、とも言える。なぜなら、WHATやHOWを問うこと、ないし、「漠然とした概念」に取り組んでみることが、そのテーマにかんするあなたの知識、あなたの立ち位置、アンテナの感受性を鍛え上げ、明確化していくからだ。

    もう少し噛み砕いて言おう。はじめは、漠然とした問いかけからはじめる。

    「いま、雇用問題について勉強している。しかしそもそも『雇用』ってなんだろう?」

    「いま新卒一括採用制度について勉強したけれど、具体的にどのような問題が生じているんだろうか?」

    前者の「そもそも」という問いは、一段階、【抽象度】をあげるのに役立つ問いだ。

    後者の「具体的に」という問いは、一段階、【具体度】をあげるのに役立つ問いだ。

    どちらも必要である。抽象と具体。この二刀流で、あなたの「小論文対策バインダー」を分厚くしていこう。



    問いは、論点だけでなく、それに【結論】を書かなければならないものだった。

    おさらいしておこう。【結論】とは【意見】である(week1)。【主張】と言い換えてもいい。だから、あなたの「言いたいこと」を述べればよい、ということになる。

    さらに、「小論文には正解がある」と述べたことがある(多くの小論文参考書とは正反対のことを私は「主張」していることに気づこう)。小論文の「正解」とは「聞かれたことに、答えている」そういう答案だ(week2)。


    【結論】の創り方は、この2つのポイントさえ守っていれば、それでオーケーだ。

    とくに、2番めのポイント、「聞かれたことに、答えている」ということが重要だ。

    キーワードは【呼応】である。

    「呼応」と聞いて、古文のややこしい文法を思い出してしまった方は、安心して欲しい。古文の文法よりも易しい(しかし大人でもできない人は多い)。

    具体例で示したほうがわかりやすい。次のような英語の問題があったと仮定しよう(ただし日本語に訳している):


    • あなたは昨日の夜、何を食べましたか?

    これが小論文でいう【論点】である。「ちゃんと呼応している結論」は、次のうち、どれか:


    1. デニーズで食べました。
    2. いいえ、食べていません。
    3. 牛丼を食べました。

    これがわかれば、小論文における【結論】の定義を完全に理解したも同然である。答えは3番目「牛丼を」というのが正解。

    ただし、日常会話では「牛角で」でも正しいことになる。WHATを聞いているのにWHEREを答えたのでは、聞いたことに答えたことにならないのでは? と思うかもしれないが、この場合は、牛角という店で夕食を食べたのだから、焼き肉を食べたということが聞き手に伝達される。話者と聞き手の間で、「牛角というチェーン店は、焼き肉を食べる場所である」という文脈(コンテクスト)が共有されているため、「焼き肉」と答えなくとも「牛角」と答えることで、実質的に「焼き肉」と答えたことと同じように、「牛角」という言葉が働く。このような言葉の働きを【機能】という。

    ちなみに2番目は「じつは昨日の夜は、何も食べていないんですよ」なら「正解」になる。これは「あなたの質問は、私が昨日、夕食を食べたということを前提としているが、その前提は間違っている」と伝えていることになる。これも「機能」だ。

    次は、もう少し難しい問題:


    • あなたは、新しいジーンズを買いましたか?

    1. もちろん。
    2. いいえ、疲れていませんでした。
    3. はい、読みました。

    これが難しいのは、【論点】(設問)が、YESかNOかを聞いているのに、答えとして正しそうなのは、1番のみ、というところだ。

    じっさい、TOEICなどのリスニング問題では、一般疑問文(YES/NOを聞く質問)に対してYESやNOで答えない、という問題ばかりが出る。日常会話ではそれが普通だからだ。ちなみにWHATとかHOWとかWHOとか、疑問詞が使われる疑問文を特殊疑問文という。「一般と特殊」というのも、「具体と抽象」と同じぐらい重要なキーワードなので覚えておこう。

    「もちろん」というのは、「もちろん(買いました)」という意味なのだが、小論文では括弧をはずして「もちろん買いました」と書くことが望ましい。

    日常会話では、「なんで知ってるの?」でも「シャツなら買ったけど」でも正解だ。


    おそらく、多くの受験生が、このふたつの問題を「簡単だ」と感じたことだと思う。しかし、次のようになると、どうだろうか:


    • ソ連・東欧の社会主義が崩壊したあとに、同地域内で民族紛争が頻発しているのはなぜか。

    1. 2014年、ウクライナにおいて騒乱が起こり、クリミア共和国の自治権をロシアが承認した。ロシアはこの独立に軍事的に手を貸しており、欧米諸国はロシアの動きを国際法違反であるとしてロシアへの制裁を実施した。
    2. 1989年にはポーランドとハンガリーで非共産党国家が成立し、ドイツではベルリンの壁が崩壊、チェコスロヴァキアで革命が起こり、ルーマニアでチャウセスク政権が崩壊した。これに連鎖するように、バルト三国が分離独立、1991年にはソ連崩壊、さらにユーゴスラビア紛争、アルバニア社会主義人民共和国の崩壊までを含めて、広義の東欧革命と言える。
    3. 社会主義のイデオロギーが国内の多民族を一つにまとめる役割を果たしていたが、ソ連の崩壊によって求心力を失い、民族間の対立が表面化したから。

    うーん。難しくしようとしたのだが、簡単だったかな。

    もちろん「なぜか(WHY)」を聞かれているのだから、3番目だけが正解だ。

    今は冷静な状態で読んでいるから、こんなものは簡単だ、と思うだろうが、試験本番で舞い上がってしまうと、「持っている知識を全部出さなければ!」と考えてしまい、1や2のような回答をしてしまう。


    さて、【呼応の法則】はわかっただろうか? 質問(論点)と答え(結論)が、ちゃんと対応している、ということだ。


    これを踏まえて、回答例を示す:

    • (1)採用する側にとっても就職する側にとっても幸福な雇用制度はどのようなものか。
    • 【結論】採用する側が就職する側に、明確に〈必要なスキル・能力を得点化する尺度・求める人物像〉を示し、かつ、就職する側が働きはじめてから快適に仕事ができる職場かどうかがわかるように、社風や組織文化を含めて事業場内の情報を嘘偽りなく開示した上での、ミスマッチングの起こりにくい雇用制度。
    • (2)新卒一括採用制度の欠点はなにか。
    • 【結論】大学を卒業した後、数年間海外留学したり、あるいはなんらかの理由で定職についていなかった者が、労働市場から排除されてしまうこと。
    • (3)企業が求めている「コミュニケーションスキル」とはどのようなものか。
    • 【結論】簡潔に意思疎通がはかれる能力でも、グローバルなコミュニケーションができる能力でもない。ただ、「一緒に働いて、苦痛を感じない」という程度の「スキル」である。
    • (4)採用基準が「情熱」だとしたら弊害はないか。
    • 【結論】「情熱」という内的状態を比較することはできない。したがって「情熱」を基準にすると、「いかに情熱的か」をアピールできるという、「アピール能力」を比較することになってしまう。このとき、採用基準の本来の目的である「情熱がある人」をみつけることはできず、「情熱があるかのごとくアピールできる人」しか見つからなくなってしまう。
    • (5)すべての人が「働くこと」に情熱を持てるものだろうか。
    • 【結論】すべての人が働くことに情熱を持つ、という事態はありえない。
    • (6)「怠け者」と言われるK君は、そもそもコミュニケーションスキルが高いのではないだろうか。
    • 【結論】K君は職場においてあまり波風を立てない「無害な」人物である。その意味で、「コミュニケーションスキル」が高い。

    【論点】に対して、呼応した【結論】を書いていれば、正解である。「本当に正しい」結論である必要はない。たんに呼応していれば、それでオーケーだ。

    呼応しているかどうか、現時点で自信がなければ、誰かに添削してもらうのもよいだろう。これに関しては、国語の教師でもかまわない。



    さて、今回「問い」として出すのは、【論拠】を創る問題だ。

    少しだけ解説しておこう。

    【論点】【結論】がそろったという前提で、【論拠】を創るという行為は、そのまま小論文のための【調査研究】のノウハウにつながるからだ。


    先の回答例で、

    • (5)すべての人が「働くこと」に情熱を持てるものだろうか。
    • 【結論】すべての人が働くことに情熱を持つ、という事態はありえない。

    という答えがあった。これを使おう。

    結論は、あなたの意見を書く場所だ。このとき、論点は、誰かに質問されたと思えばよい。もちろん試験では、論点の設定自体を自分でやらなければならないことも多いが、「あたかも他人から質問されているかのごとく」仮定して、あなたの意見を述べて欲しい。

    【論拠】とは、質問者が「では、どうしてあなたはそう考えるのか?」と聞いてきたときに行う「説明」である。

    ここであなたは、「なんで?」「どうして?」と、自分自身に問いかけなければならない。

    「だって……だってそうなんだもん!」となったらゲームオーバーだ。


    「すべての人が働くことに情熱を持つ、という事態はありえない」と「意見」を私は述べた。

    ここで、「どうしてそう言えるの?」と自問自答する。

    私はこう答えはじめる:「なぜなら……」と。英語で言う"because"である。

    たぶん、中学校のときに、英語でWhyという疑問詞を習ったときに、答える側は"because"で答えはじめる、と習ったと思う。あれをやればいいのだ。

    (試験で必ず「なぜなら」で書きはじめなければならない、という意味ではない。考え方の問題だ)


    「職の数は実質上、有限である。しかし、人が情熱を向けられる事柄は、無限である。ゆえに、すべての人が働くことに情熱を持つ、という事態はありえない」


    こう、私なら答える。

    これはちょっと冗長的である。一度【結論】で言っていることを再び述べているところが。

    この答えの中の「ゆえに」に注目して欲しい。「したがって」という意味だ。この答えには「なぜなら」がない。なぜなら、文中に「ゆえに」があるからだ。

    「なぜなら」も「ゆえに」も【接続詞】である(ちなみに英語で"therefore"は「副詞」なので注意しよう)。

    図解すると、こうなる:

    • 【論点】(質問)→【論拠】(説明)→therefore【結論】(意見)
    • 【論点】(質問)→【結論】(意見)→because【論拠】(説明)

    「論文の構成」については、いずれ改めて解説するが、どの形を使ってもかまわない。いずれにせよ「小論文に必要な3要素」を書かなければならないのだから。

    基本形は、

    • 【論点】(質問)→【論拠】(説明)→therefore【結論】(意見)

    である。「序論(論点を述べる)」「本論(論拠を述べる)」「結論(結論を述べる)」という構成だ。小論文とはこういう構成をしていると、いまのうちに覚えておいてもよいだろう。

    2つ目の

    • 【論点】(質問)→【結論】(意見)→because【論拠】(説明)

    は、論点の後に、あなたの意見がすぐにくるので、読む側にとってはわかりやすい。どういう意見を正当化するためにこの論拠が述べられているのか、ということがあらかじめわかるからだ。


    構成は他にもあるのだが(論点を省略するなど)、いまはこの基本形を覚えておけばよい。


    論文の構成の基本形はtherefore(それゆえ)の形だが、【調査研究】(つまり日常での学習)では、because(なぜなら)を使う。ある問いをたてる。「なんとなく」でよいので結論をつくる。あるいは、読んだ文章の筆者が出している結論を「とりあえず」借りてくる。それから「なんで?」と自問自答する。「なぜなら……」と、ここで調べる必要性が出てくる。

    これを繰り返していけばよい。


    では、今回の問題文を掲載する。【論点】【結論】【論拠】の3つを創る「問い」が後にくることもあらかじめ言っておく。

    次の文章は、池田晶子『14歳からの哲学』の冒頭部分だ。

    この本は、あえて必須指定文献にはしないけれど、今現在、日本の受験生はほぼ全員読んでいる文献なので、もしあなたが現時点で「手元にない」という状況なら、「受験生としてのアンテナの貼り方が、ちょっとまずい」と思ったほうがよい。「あえて手に取らなかった」という方なら、それはそれでよい。「中学時代に読んじゃったよ、幼稚だから、売っちゃった」というあなた……哲学科志望かな?

     君はいま中学生だ。

     どうだろう、生きているということは素晴らしいと思っているだろうか。それとも、つまらないと思っているだろうか。あるいは、どちらなんだかよくわからない、なんとなく、これからどうなるのかなと思っている、多くはそんなところだろうか。

     生きているということは素晴らしいと思っている人にとって、生きているということは素晴らしい。なぜって、その人が、生きているということは素晴らしいと思っているのだから。

     生きているということはつまらないと思っている人にとって、生きているということはつまらない。なぜって、その人が、生きているということはつまらないと思っているのだから。

     どうだろう、こんなふうに言われて、君は何か意外なことを聞いたように感じるだろうか。それとも、すごく当たり前なことを聞いたように感じるだろうか。

     ひょっとしたら、誰かは気がついたかもしれない。生きていることが素晴らしいかつまらないかということは、つまり、その人がそう思っているということなんだろうか。その人が素晴らしいとかつまらないとか思っているから、生きていることは素晴しかったりつまらなかったりしているんだろうか。つまり、自分がそう思っているから、そうなっているってことなんだろうか。

     そうだ、その通りなんだ。生きていることが素晴しかったりつまらなかったりするのは、自分がそれを素晴らしいと思ったり、つまらないと思ったりしているからなんだ。だって、自分がそう思うのでなければ、いったい他の誰が、自分の代わりにそう思うことができるのだろうか。

     やっぱりすごく変なことを言われた感じがするかな。でも、よくわからないけれども、なんだかもうわかっていることのような感じもするよね。何とも言えず不思議な感じがしているんじゃないかな。

     いったい何が不思議なんだろう。その不思議な感じを、自分の中へ、ずうっと追いかけて行ってみてごらん。不思議な感じの出てくるところを、きっと見つけられるはずだから。

     誰か見つけたかな。そう、不思議な感じの出てくるところは、「自分が、思う」というこのことだ。自分が思う、自分がそう思う、何かについて自分がそう思っているという、このことだ。この「自分が思う」ということは、いったいどういうことなんだろう。そう気がついてみると、ものすごく不思議なことではないだろうか。君は、これまで十数年間生きてきたわけだけれども、ふと気がついたら、君はいつもずうっとこの「自分が、思う」をやっていたわけだ。いつでもどこでもどんな時でも、「自分が、思う」だったわけだ。これって、当たり前で、何かすごいことなんじゃないだろうか。

     あるいは、誰かこう反論するかもしれない。いいえ、私は自分が思うばかりじゃなくて、両親や先生や友人のことも、ちゃんと一緒に思ってましたよって。

     うん、それはまったくその通りだ。誰も他人と一緒に生きている限りは、自分ばかりを思っているわけにはゆかないからね。でも、どうだろう、君が、そうやって他人のことを思うのにも、やっぱり君が思っているんじゃないだろうか。君が彼らのことを思う以外に、彼らのことを思うことは、やっぱりできないんじゃないだろうか。両親や先生や友だちが、君の代わりに彼らのことを思うことはできないのじゃないのかな。むろん、彼らは彼らで自分のことを思うことはできるだろう。でも、彼らは彼らで自分のことを思うことができると思っているのは、やっぱりどこまでも君なんだよね。

     うーん、いよいよ不思議なことになってきたね。自分が思う以外に思うことはできないって、これ、どういうことになっているんだろう。自分のことばっかり思ってないで、他人のことも思いなさいって、よく叱られるよね。でも他人のことを思うのだって、自分が思うしかないじゃないかって、そういう時は反論すればいいよ。よけい叱られるかもしれないけどね。

    (池田晶子『14歳からの哲学』)

    タイトル通り、この本は、中学生ぐらいの生徒に向かって語りかけている内容なので、高校生の皆さんが読むと子ども扱いされているようで嫌な気分になるかもしれないけれど、それは「文体」の問題なので、そこは考えないようにしよう。

    問い6:上の文章中に、池田晶子『14歳からの哲学』からの引用がある。これを読んで、(最低でも)6つの【論点】を設定しなさい(本文中で指示されている「6つのポイント」を使うのが望ましいが、こだわらなくてもよい)。数に上限はない。またそれぞれの【結論】を書きなさい。また、【論拠】を「それぞれ、ひとつだけ」書きなさい。文字数にも上限はない。


    課題。


    漢字対策。常用漢字を「書ける」自信がない場合は漢検の2級までの範囲を学習する。「読める」漢字は多いにこしたことはないが、漢検より読書によるべきだ。

    ことば対策。意味がわからない単語や言い回しが出てきたら、辞書・用語事典で調べる。

    要約対策。

    • 【センターで現代文が必要な受験生、および私立文系の場合】現代文で出題される論説文(評論)を要約する。センターレベルで「難しい」と思うようであれば、『田村のやさしく語る現代文』か『船口のゼロから読み解く最強の現代文』。これらが「簡単すぎる」と思うようであれば『現代文読解力の開発講座[新装版]』(MARCHGレベル)、それでも易しければ『現代文と格闘する』。
    • 【受験科目に現代文がなく、かつ理系の受験生の場合】村上陽一郎『近代科学を超えて』と中谷宇吉郎『科学の方法』を少しずつ(章・節・項からなっている場合、項ごとに)要約する。
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