Entries

    自分という「箱」あるいは「スキーマ」



    久々に曲をアップしました。

    Heal me, Heal you - note


    IllustStudioでジャケットつくりました(上の画像がそれ)。


    水彩ツールで描画したのに、noteだと縮小されるから、ただのムラがあるてきとーな絵にしか見えないw


    自分という「箱」あるいは「スキーマ」


    最近、立て続けに、似たようなトピックの記事を読みました。



    ふたつめの記事は、ひとつめの記事を受けたかたちのブックガイドになっています。


    ひとつめの記事をぼくが読んだときの感想は、「こうして少しずつでも、認知行動療法をカジュアルに、ライフハック的に使ってくれる人が増えるような啓蒙活動をしてくれるのは、ありがたいなあ」というものでした。


    「スキーマ」というのは、日本語に訳すとすると「図式」とか「図解」とか訳されますが、認知行動療法では「認知構造」なんて訳されることもあります(「スキーマ」と「認知構造」が同じ意味なのかというと、それも議論の余地がありますが)。


    我々は「ヒト」という動物ですから、ヒトに与えられた感覚器官を通してしか、外界を知覚することはできません。

    視覚や聴覚や触覚などを通して加工された「現実」の中を生きています。

    人間の精神は、そもそもこれらの知覚によって拘束されているので、「ありのままの世界」を知ることはできません。

    こうした事態を、古代ギリシアの哲学者プラトンは「身体という牢獄」と呼びました。


    人間には「思考」がありますね。

    思考は自由であるように思えますが、思考の素材は知覚されたデータなので、やはり思考もかなりのていど感覚器官に拘束されています。


    いま「思考は自由」と言いましたが、本当にそうなのか、何百年も前から議論されてきました。

    あるていど「人間が縛られているであろうと考えられる、思考のルール」を整理したのが、おおよそ300年ほど前に活躍した哲学者カントです。

    あくまでも「あるていど」なので、カントの議論をたたき台にして、それ以降も議論はされ続けているのですが、ここで重要なのは、「なぜカントまでは人間の思考のルールについて結論を出すことができなかったのか」という問題です。


    これについてもいろいろと議論はあるかと思いますが、いちおう、説得力があるとされている答えは、「カント以前には、人間を縛るルールがあるとすれば、それは神に属するものとして考えられていた(あるいはそう公言しなければならなかった)」というものです。


    カントが画期的だったのは、「人間を縛るルール」であるからには「人間を超越している」にもかかわらず、それを「神が決めたルール」としなかったところです。

    (古代哲学はどうなんだとか、デカルトはどうなんだとか、スピノザはどうなんだとか、いろいろ言いようはあるでしょうけれど)


    「図式(schema)」という用語は、いまでもおおよそ、カントの用法にしたがっています。

    「スキーマ」schemaが英語化されたときに「スキーム」schemeとなってしまいましたが、英語でも両方使います。

    ビジネス用語としては「スキーム」が好まれますね。ビジネススキームとか。



    余談がいつものように長くなりましたが、人間の思考は完全に自由ではありません。

    命題1:「ピンクの象が降ってきたので詩を経費にした」

    みたいな、一見「自由」にみえる思考も可能ですが、

    命題2:「足すかける在る、46継承デプロイ」

    という命題を有意味に思考することはできません。無意味な言葉の羅列か、詩的言語としてしか理解することはできないですよね。


    さきに命題2について言っておくと、これもまた「言語」に縛られています。

    我々は、どんなに無意味で自由な思考をしようとしても、それを意識するならば、必ずなにか言語のようなもの(イメージとか、感覚とか)の「連結」によってしか考えることはできません。

    そしてそれを記述しようとするなら、もう言語に頼る以外、なくなってしまいます。


    ちなみに命題1の思考を分析すると、

    • SがVした OをVした……「文法」による拘束
    • 「ので」……「因果律」による拘束
    • 「ピンクの」……「視覚」による拘束
    • 「象」「詩」「経費」……「言語」による拘束(「象」は視覚的な要素もあるでしょう)

    となり、文の頭からおしりまで、ぜんぶ「ルールに縛られている」ことがわかります。



    認知行動療法は、こういう「ルールによる思考の拘束」をターゲットにした心理療法です。

    もちろん、「文法」「因果律」「言語」のような、あまりにも強力な「拘束」を解除することはできませんが(なんといっても、人間はこれによって生きているわけですから)、「考え方の癖」みたいなものは、ちょっとしたトレーニングで解除することができます。


    欧米では心理療法は医師が行うので、効果が認められた心理療法であれば、いずれも保険がききますが、日本ではまだ認知行動療法しか保険がききません。

    (もっとも、「心理検査」の名目で、心理士による面談を行っている病院はたくさんあります)


    じゃあ、「心理療法が治療とみなされない日本でさえ認められている認知行動療法は、そんなに効果が確実なのか」というと、そこは疑問です。

    たいていの心理士やカウンセラーは認知行動療法を知っていますが、適用範囲は限定的です。

    理由はたくさんありますが、ぼくの個人的な感覚で言うと、「認知行動療法をバリバリやれるような患者はすでに回復しているといっていい」という感じです。


    そこで、冒頭の記事のふたつめなのですが、5冊の本をすすめています。

    どれも読んで損はないと思いますが、もしあなたが「自分の認知の歪み(=考え方の癖)によって感情面や行動面につまづきを感じている」のであれば、がむしゃらにこれらの本を読んでも、疲れるだけですよ、といらぬおせっかいを感じてしまいます。


    ふたつめの記事を読んだときのぼくの感想は、「なんでカウンセリングを受けずに、本を読んだだけで済まそうとするのだろう。機会費用がバカにならないですよ」というものです。


    「機会費用」というのは、オポチュニティ・コストのことです。

    英語にしただけですが……

    「費用」とは、お金のことだけではありません。

    「なにかを選択した」ばあい、「それを選択しなかった世界」という選択肢を失うことになります。これも費用。

    「時間」も費用。その時間(たとえば5冊の本を読んで、自分で試行錯誤してみるとか)に、別の何かをする選択肢は失われます。時間は(人間にとって)有限ですから。

    これは「死」だけを意味しているのではありません。

    たんじゅんに、お金の貨幣価値も、時間とともに、目減りします。

    「いま100円もらえる」のと「1年後に100円もらえる」のとでは、前者のほうが価値が高いのです。

    (計算のしかたはわかりますか?会計学の基本ですよ)


    「じゃあ、認知行動療法の本を読むのではなく、カウンセラーのところに行って認知行動療法を受けるのがいいのか」というと、そうじゃないんです。


    本を読むよりカウンセラーのところに行くほうが手っ取り早いのは確かですが、認知行動療法だけが選択肢ではないのです。

    カウンセラーの仕事をしていると、「認知行動療法がしたいです」というクライアントさんは多いのですが、そしてそういうニーズには可能なかぎり答えていますが、そのクライアントさんに認知行動療法が効果的かどうかは、まったく別の話なのです。


    「スキーマを書き換える」と表現するにしても、「箱から出る」と表現するにしても、目標は同じです。

    それは「問題解決」です。

    たしかに、クライアントさんは「考え方に癖がある」「性格に癖がある」「それが問題だ」と訴えます。

    おっしゃることはおそらく事実なのでしょう。

    「問題」の原因は「考え方」とか「性格」とか、あるいは「スキーマ」とか「箱」とかなのでしょう。わかりませんが。


    ですが、「解決因」は「問題の原因」とは独立しているというのがほんとうのところです。

    具体的に言うと、「Xが原因でYという事象が起きている」というとき、「Yは問題だ」という人たちは、ほとんどのばあい「原因であるX」にばかり注目してしまいます。

    これが無駄なのです。

    問題と解決は独立しているのですから、ここに「解決因Z」という新しい要素を付け加えるのです。

    Zは、Xとはなんの関係も持っていないか、あるていど関係があったとしても、Xそのものではありません。

    われわれカウンセラーが「クライアントの問題を解決する」にさいして重要視するのは、「いかにしてZがすでに存在していることに気づいてもらうか・少ないZを多くするか・Zを生じさせるか」ということにつきるのです。





    関連記事
    スポンサーサイト
    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
    http://orangeprose.blog.fc2.com/tb.php/1032-e49bf2fa

    トラックバック

    コメント

    コメントの投稿

    コメントの投稿
    管理者にだけ表示を許可する

    Appendix

    counter

    FC2ブログ

    ブログ

    リコメンド




    ノートンインターネットセキュリティ


    ブログランキング

    QRコード

    QR

    メールで更新を受け取る



    提供:PINGOO!

    ブロとも申請フォーム

    この人とブロともになる